デート 3

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「放課後デートしなきゃ」



 日曜日、莉茉は結菜の家に来ていた。結菜の妹の玲奈に借りていた漫画を返すためだ。
 
「ねぇ、りっちゃんの彼氏ってどんな人?」

 漫画を借りる際、男女交際の参考にすると言ったため、莉茉に彼氏ができたということは玲奈は既に承知だ。しかし、その時には借りていくだけで直ぐに帰ってしまったため、詳しい話が聞けなくて残念に思っていたのだった。姉に聞いても知らないの一点張りで教えてくれない。ようやく本人に会えたために、少々興奮しながら話を切り出した。というのも、どうにか姉から聞き出した唯一の情報によると、顔は格好いいらしい。姉が言うのだから相当の筈だ。
 
「そうだな……顔は、まあ、整ってるかな」

 正直に言えば、容姿は良いがそれをいいことに女を短期間で入れ替えているような男だ、とでも言った方が正確だろうとは思うのだが、中学一年生の夢見るお年頃である玲奈にはとても言えない。
 
「やっぱり格好いいんだ! いいなあ」

 うっとりと、格好いい彼氏を想像しているように宙を仰ぐ。今、玲奈の頭の中で隼人はどんな想像がなされているんだろう。
 理想と現実は天と地程も掛け離れているのだ。莉茉は既にそれを知っている。そして玲奈はこれから知るのだろう。
 莉茉はそんな玲奈を微笑ましく見ていた。
 
「写真とかないの?」
「無い」

 無いと聞かされて玲奈は心底残念そうだ。今度撮ってきてと懇願されて、渋々ながら莉茉は頷いた。

「デートとかした?」
「まだ」

 学生である以上、デートをするとしたら休日を利用するしかない。つまり、休みの日まで隼人に拘束されるということで、ちゃんと好き合っている者同士ならそのことに問題は全く無いのだが、如何せん莉茉は当て嵌まらない。
 
「お互い都合が付かなくて」
「そうなんだぁ。じゃあ全然一緒にいられないね」
「まあでも、昼食と下校は一緒だし」
「そっか、じゃあ放課後デートすればいいじゃん!」
「……放課後デート?」
「うん! 帰りに一緒に喫茶店に寄ったり、CDショップで好きな音楽の話したり、ゲームセンターで彼氏にぬいぐるみ取って貰ったりとか」

 それは借りた漫画に載っていたことだ、と思いはしても口にはしない。
 玲奈は結菜の妹だが、莉茉にとっても妹のようなものだ。莉茉の中の姉精神が少しでも玲奈の自尊心を傷つける可能性のある行動を抑制している。
 
「わかった。今度やってみる」

 兄なんかより妹が欲しい。
 常々、莉茉はそう思っている。



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